テレビの裏側をコッソリ暴露! 謎の業界人集団「チーム・スパイス」の業界裏日誌

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  午後5時過ぎ、オレは打ち合わせのため、某芸能プロダクションの会議室にいる。

  目の前では、人気タレントのYが気難しい顔をして番組の構成案をじっとにらんでいる。
  室内には重苦しい空気が漂う。
  静寂は罪だ。

  オレの隣に座る放送作家が、何を思ったのか、最近プライベートで訪れた香港の話を面白おかしく話しはじめた。
  おそらく、この場を和ませようとしたのだろう。
  だが、そんな努力も空しく、Yの表情はより険しくなった。

  「勇気は認めるが、余計なことはするな」と、オレは隣席の“お調子者”の足をコッソリと踏み付けた。

  Yはオレたちが持参した構成案の内容が気に入らず、気分を害しているのかというと、実際はそうではない。
  カレは、わざと“不機嫌”を装い、初対面であるオレたち番組スタッフを試しているのだ。
  そう、自分のことをどれだけ知っているのか、自分をどれだけ気持ち良くさせてくれるのか、オレたちの出方を伺っているのである。

  足を踏まれたことを忘れたのか、はたまた何も感じなかったのか、隣席の“おバカ”はめげずに、香港みやげをカバンから出そうとしていた。

  「えっ!? このタイミングで?」というヤツだ。
  冷や汗がたらりと背中を伝う。

  オレはみやげが机の上に乗らないように“おバカ”の手をさえぎり、記憶の奥底から掘り起こしたYに関する情報を口に出した。

「オレ高校の時にラグビーやっていたんですが、Yさんもやっていらっしゃいましたよね? たしか『ラグビーマガジン』を捨てずに、コレクションされていますよね?」

  その瞬間、それまで沈黙を続けていたYは破顔してこう言った。

「なんだ~、元ラガーマンか! 早く言えよぉ~!!」

  自尊心の塊とも言うべき芸能人は、番組に関わるスタッフが自分のことをどれだけ知っているのか、自分のことをどれだけ大切に思っているのかをかなり意識している。
  とくに初対面では、その傾向が強い。

  にもかかわらず、ヒット曲や出演していた人気番組など、知っていて当然の情報を知らずに打ち合わせや取材に臨む無謀なスタッフもいる。

  もちろん、オレも今回の打ち合わせにあってYに関する情報はさらっておいたわけだが、隣の“おバカ”のせいで頭の中が真っ白になり、一瞬覚えておいた情報が頭の中から消えてしまったのだ。

  何とか軌道修正し、ひとしきりラグビー談議で盛り上がると、この日の打ち合わせは無事終了した。

  帰り道、ほとんど役に立たなかった“おバカ”な放送作家は無頓着にこうのたまった。

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